嗚呼トムラウシ

最初にお断り。
ムダに長いですし、見るべき写真はありません。読んでいただける方は「more」へ



大雪山系のほぼ中央に位置するトムラウシ山(2141m)。
どの登山口からも遠いことから「遥かなる山」と称される全国の岳人の憧れ。
経験の少ない僕にとっても憧れの山で、いつか登ってやろうと思っていた。

当初の計画では、目的地から16キロ程東の沼ノ原登山口から入る予定だったが、
前日に入った情報で、その登山口に至る林道が決壊し、復旧の目処が立たない状況であることを知り
急遽ルート変更を余儀なくされる。

結局なるべく避けたかったトムラウシ温泉(短縮登山口)から総重量約19kgを背負い、一路“トムラウシ”を目指すこととなった。

主たる目的はトムラウシと天の川。
前日、台風から変化した熱帯低気圧が通り過ぎ、
次の前線が入るまでのたった一晩、ピンポイントでいけると読んでいた。
まずトムラウシに登頂し、その後ヒサゴ沼で小休憩、夜目掛けて化雲岳に登り星空を撮影、
その後はヒサゴ沼避難小屋拠点で二日ほどダラダラしようというフリープラン。

序盤、天気は最高。十勝岳連峰を横目に
また奇跡の星空を撮れるぞとニンマリしながら高度を上げる。
(後で酷い目に遭うとも知らずに・・・)
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前日の雨でドロドロになった新道を過ぎると右手にトムラウシの全貌が見えてきた。
なんだ、案外・・・
なんて思った自分は大馬鹿者で、ここから一気に100m程の下り、イタドリ沢に突き落とされる。
ここからはまたひたすら登る登る登る。
沢沿いにコマドリ沢の源流をつめ、砂礫の尾根のきつい登りを行くと前トム平。
途中ナキウサギの鳴声とともに何度かその姿を確認。
残念だけど今日は君達を撮るレンズは持ち合わせていなのだよ。
そもそもこの頃、ザックからカメラを取り出す余裕すらなく、コンデジで記録的に撮ることしかできなくなっていた。
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森林限界を超えもうしばらく進むと、奇岩や沼の眺めが美しいトムラウシ公園に達する。
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そこはとても美しく、やはり花の時期(7月中旬から8月上旬)にも来たいなと思わせてくれる場所だった。

それにしても疲れた。ここまで4時間半。普通のペースだと思うが、何か妙に疲れる・・・
山慣れしてないこと、2時間しか寝てないこと、高度の影響、理由はいくらでも見つかり、暫し休憩することにした。。。

最後の一登りをし、遂にピークに達したのは出発から6時間余り経った13:00頃。
全てを一望できる360度の大パノラマ、全国各地から拝みに来る最高の眺望・・・・は・・・  ん?・・・どこ・・・ですか?
なんと計ったようにこの頃ガスが出始め、先ほどまでの青空がウソみたいに乳白色に染められていたのでした。
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下山にも時間が掛かる山故、この時間、かのトムラウシの頂上には自分1人しかいない。
そんなしょーもない満足感に浸りながら時計の高度計で誤差を確認したり(-79m)
ここぞとばかりに5DⅡをザックから取り出し、飯食いながら晴れるのを待ったものの回復の兆しは見えず。
14:00、ヒサゴ沼に向け背中を丸めて出発した。
気を取り直し巨岩帯を下る。
ロックガーデンに達し表大雪を一望
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この広大さは行って見て、実際歩いてみないと縮尺が掴めない。
とにかくデカイ、そして一々長い。

長く険しいロックガーデンを下った所で最大のミスを犯した。
下を見て降りているうちルートマークを見失う。
地図を見る。コンパスも持っている。でもちゃんとした見方は解っていない。。。
とりあえずヒサゴ沼は雪渓の下にあるのだからと東方向に行ってみた。
崖しかない。
あっ、さっき上から撮った写真。見ると見事雪渓が写っている。
これだ!(違うんですけどね)
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一山越えて辿り着いた雪渓を下り、勝手にヒサゴに着いたものと余裕の撮影。
しかしこれがこの山行で最後の写真となる。

雪渓を下りきったところに山小屋らしき物は見当たらない。
さらに奥を見ると沼が点々と見える。
あ、そっちか・・・(疲れでバカになってる)
さらにゴロゴロした岩を下る
ない、ない、山小屋がない。
多少のパニックに陥る。
日が傾き始めている。
時間を確認すると僕のSUNTOは1730を指している。
これが高度計と気付くのに15分も掛かかるほど焦っていた。
それでも16:00は回っている。
しかもここで最悪の追い討ちが襲う。
ブルッブルブル・・・・・悪寒だ。
のどの痛みと鼻水は多少気になったが、まあたいしたこと無いだろうとたがをくくっていた。

日の入りは18:15頃、最悪2時間以内に登山道に復帰できなければちょっとどころじゃなくヤバイ。
そんなことを考えながらもさらに下るバカな自分。。。
ふと見ると化雲岳が見えた。
どうせ行く予定だったのだから、直で行きゃいい。
登山道でもなんでもない最悪なルートを進んだ。
岩を行き沢を行きハイマツを飛び越えた。
時には貴重な高山植物も踏んだ。
一歩一歩「ごめんなさい、ごめんなさい」と念じながら歩く。
神々が住むと言われる山で神の逆鱗に触れる人間の象徴のような自分だった。
一瞬立ち止まり圏外の携帯電話で子供達の写真を待ち受け画面に設定した。
力が湧いた。
過去一のスピードで駆け上り、化雲岳下の雪渓に辿り着いた。
そこからは、登山道もヒサゴ沼も見ることができた。
助かったぁ、プチ遭難を乗り越えた。

17:40、ハッキリ言って疲れ果てていた。
途中死ぬと思った危機から脱せた安心感もあり、このまま避難小屋に行こうとも考えたが、
せっかくこのためムダに重い荷物持ってきたのだからとヒサゴのコルにザックをデポし、
三脚、カメラ、水、行動食、ツェルト、爆竹だけ持ち化雲岳に向け歩き始めた。

具合は悪いが汗をかけば熱は下がるはずとズンズン歩く。
けっこう登り、トムラウシが見えるはずの位置に到達。
西の空が半端に焼けるのを見つつ、ソラを見渡す。
今まで色んなソラを見てきたから、この後どんなことになるかは凡そ想像が付く。
ダメだこりゃ。撤収!

ヒサゴ沼避難小屋に辿り着いたのは、半日歩いた19時過ぎだった。

“嗚呼トムラウシ”シリーズ第二章「王の帰還」はまたそのうち・・・奇跡の写真無しでお送りいたします。
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by mj-p | 2010-09-07 23:54 | 風景