嗚呼トムラウシ 第二章

さあ「凪」史上初の写真無しでお送りする 嗚呼トムラウシ第二章
MJの運命やいかに!






ヒサゴ沼に着くとカレーのいい香りがした。
10人くらいのおじさん達から一斉に視線(ヘッドライト)を浴びる。
西部劇でよく見た光景だ。

なだれ込むように靴を脱ぎサンダルに履き替え垂直なハシゴで2階に登ると
1人のおじさんがとても重たい僕のザックを2階まで持ち上げてくれた。
そして水場まで教えてくれる。
実は皆優しい人たち。山好きの一体感、嫌いじゃない。

やや埃っぽい場所だがスペースは十分、
マットとシュラフを広げたと同時にその場で大の字になった。

マジ疲れたぁ~ プチ遭難が余計だったなぁ~
何キロ歩いたか考えるのも面倒に感じるほど疲れていたが
とりあえずバーナーで湯を沸かす。

食欲は無かったが、体力回復のため無理矢理にでも何か食べることにした。
今夜はドライのピラフとパスタ。
いつもなら一番楽しみにしている時間も、胃に流し込み終了。
鼻も詰まっていて味もよく分からなかった。
それでも食後のキャラメルラテは美味かった。

20:00、小窓から空を見上げる。
そこには星一つ無い夜空が広がるばかり。
ま、こんなこともあるわなと妙に納得し、就寝モードに入る。

うとうとしていると下に居る数人の話し声が耳に入ってきた・・・

クチャンベツ林道は、予算もなく、今年どころか来年も復旧は厳しいらしい・・・・・ふむふむ
羅臼岳は登山道の熊も立ち去り、入山禁止が解除になったらしい・・・・・ふむふむ
今日は忠別岳付近で親子熊を撮った・・・・・おっ・・この流れ・・・
ふむふむ・・・・キャノン・・・・いやニコンだ・・・・ふむふむ・・・・ん?
コンデジかい!
おやすみなさい。zzz・・・



ガクガクガクガクガク・・・
23:30、ガクガクガクガク・・・寒い・・・寒すぎて目を覚ます
-10℃位まで対応のシュラフにフリース、タイツは二枚履いている
ガクガクガクガク・・・・・なのに震えが止まらない

上がってきちまったなぁ
経験上39℃ってとこか
だからと言ってココで待ってれば誰かがヘリで迎えに来てくれるわけじゃない
そもそも携帯も通じやしない
山は自己責任!これ基本!

ガサゴソと荷物をあさり、着れそうなモノを重ね、今まで出したことのなかった非常用のアルミの寝袋
みたいなのを着てシュラフに潜り込んだ。


2:00。窓に吹き付ける雨風の音で目が覚めた。
やはり崩れるのが予想より早かったようだ。
予備日はある。一日ここで天気と風邪の回復を待つか
朝一で出てゆっくりでも下山するか。。。

うだうだしてる間に4:50.
周りも起きはじめ、各々準備を始める。

天気の話を色々聞くが、明日も回復は見込めない模様・・・
よし、稜線に出て判断しようと思い立ち 5:40、小雨の中一番乗りで出発した。
案外周りの出発が遅いのは、殆ど天人峡に下る人だったから。
あとは住み着いている人か・・・
唯一トムラウシに登り返す僕へ一様に「気をつけてな」と送り出してくれた。

歩き出すとすぐ、水汲みから戻る仙人様から「今は落ち着いているが、あと2時間もしたら荒れるぞ」
と有難いアドバイスを戴く (後に見事的中する)

ヒサゴの分岐から少し登った先、なぜか昨日は通ってない木道を歩く。
これはいい。ずっとこんな道ならいいのにとガスって視界30mの中を進む。

最初の難所に差し掛かった。
鬼門のロックガーデンだ。
自分よりデカイ岩が一面を覆いつくしている。
何がどうなったらこんな状況が出来上がるんだ
できれば回避したい道だが、どうしてもここを登らにゃ帰してもらえないらしいので
ゼェゼェ言いながら、文句言いながら登りきった。(ココはもう見るのもイヤ)

北沼分岐の手前まで来た。仙人様の言っていた2時間を30分程過ぎたところで
一気に雨風が強くなる。
山の天気は変わりやすいとハイジの爺さんも言っていたがそのとおりである。

北沼から南沼に抜けるこのコース、
ココは昨年7月のあの痛ましい遭難事故の舞台。
20~30mの激しい突風と雨、氾濫した沼に体力と体温を奪われ9名が死亡した。
北沼まで6時間掛かったというのだからその荒れっぷりは想像を絶する

この日は、時折12~3メートルの風が吹いたくらいだと思うが、結構なモノだった。
吹き付ける雨、ゴアじゃない雨具が悪いのか、中はべっちょりで不快指数98%。
鼻水は垂れっ放し、考えないようにしてはいたが、やっぱり超具合悪い。
もはや暑いのか寒いのかよく分からなくなっていた。

その付近で手を合わせ一礼してから進んだ。


たまに休んではカロリーメイトを食べた。
メイプル味はメチャクチャ美味い。でも何となく熊が寄ってきそうで不安になる。
本当は1時間でも休憩したいところだが、5分も休むと一気に体が冷えてきた。
頭をかすめる“低体温”というフレーズに怯えながら休んでいられず立ち上がる。
また携帯で子供の写真を見る。
歩く。
これをこの先2時間程繰り返した。


なんとかこんとか前トム平。
ここまで来りゃ、なんとかなる。
リズミカルに高度を下げていく。
行きより幾分荷物も軽い。
泥んこ道に足を投げ出すように進む。

でもこの山やっぱ長い、
膝下泥だらけで歩くこと3時間
ようやく短縮登山道分岐に辿り着いた。
ずっと待ってたこの看板。
左に折れてからは、どこにこんな力が残っていたのか飛ぶように下る

そして700m先。。。

無事生還。


入山届けに時間を入れ車に飛び乗り一路温泉へ。

15分も走れば「トムラウシ温泉東大雪荘」に到着
入浴料500円だったが、1万円の価値ある温泉だった。

冷え切った身体を芯から温めてくれる過去最高の気持ちよさ。

休憩場所の広さ、外に設けられた登山道具の洗い場、
これが全国の登山者を癒してきたんだなぁ としみじみ痛感した。


ここからさらに3時間半ほどかかる自宅までの道程で色んなことが思い返された。
反省は数多、でも自分を褒めたい部分も少しはある
色々ひっくるめてよい経験になったと括る事にしよう。


19:00頃、帰宅。

体温計は40,2℃
やっぱりね~



          拙い文章にお付き合いして頂き ありがとうございました。 MJ
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by mj-p | 2010-09-09 22:05 |